スキーと身体 & スキー オフトレーニング
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質問

0008

kasai

2001/08/10

  太ももの表の筋肉を鍛えたら、裏側の筋肉も鍛えなければならない…とある方から聞いたのですが、スキーで言う所の、腹筋と背筋の場合、鍛える比率というようなものはあるでしょうか?
  また、腹筋と背筋を鍛える事によるスキーへのメリットは何になるのでしょうか?
  できましたら、「スキーをする上で大事な筋」はどこの「筋」かも教えていただけますか?

 
お答え

”Dr.K”

  人間の身体には約200個の骨格があり、それぞれの骨格は関節でつながっています。それを約400もの骨格筋が支えています。筋肉は関節をまたいで張っていて、骨の前面を支えている物と、後ろ側を支えている物があります。関節前面の筋肉が収縮すると後ろ側の筋肉が弛緩します。また、その逆の動きがあるから関節が曲ったり伸びたりして、身体が動くわけです。

  “動き続ける”という一連の動作の中では、前面の筋肉が緊張し、後面の筋肉が緩み、次の瞬間後面の筋肉が緊張し、前面の筋肉が緩んでいるという事がごく当たり前のように繰り返されています。
  また、スキーの滑走時を思い浮かべて下さい。ターン後半に向かって外足で圧を貯めてゆきますが、その時、最も力を出している部分は太ももだと思います。しかし、太ももの前面の筋だけが緊張しているでしょうか。裏側の筋肉も緊張していませんか。筋がアイソメトリック(静的収縮と言い、筋が長さを変えないで張力を発揮します。)的に収縮している時は特に、骨の表裏両側の筋肉が同時に緊張しているように思います。
  一番大きな負荷を受けている部分に意識がいく事で、その反対側の筋肉も緊張している事に気が付かないだけなんですね。ですからバランスの取れた筋肉作りという意味でも、表の筋肉を鍛えたら、その反対側の筋肉も同様に鍛える事は当然ではないでしょうか。
  そこで、腹筋と背筋を鍛える比率は?と言うご質問に対してですが、腹筋・背筋のどちらが重要かではなく、両方とも重要な筋肉ですし、表と裏の筋肉のバランスを保つという意味でも、鍛える比率は50対50の「均等に」が良いと思います。

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  背骨は一本の骨ではなく、26個の骨が連結しています。それを腹筋と背筋で支えているわけです。動きの中でバランスが崩れ、上体が前に行けば引き戻そうと背筋が、上体が後ろに行けば腹筋が働きますし、立っているだけの時も、運動している時も、前後左右のバランスを取るために腹筋・背筋とも緊張しています。両方の筋力が強ければ強い程、どんな場面でも上体の安定は保ち易いと言えるでしょう。

  次に、スキーをする上で腹筋・背筋を鍛えるメリットについてですが、腹筋や背筋は“滑る”という動きに対して、主に関与する筋ではありませんが、いろんなスポーツの動作を見てみても直接的に関与する筋とそれを補助する役目の筋があるという事はお解りでしょうか?
  例えば“走る”という行為に直接関与しているのは脚部の筋だという事は間違いありません。走るという動きの中で、蹴る瞬間は加速します。逆に足が着地する瞬間は少なからずブレーキがかかった状態になります。すると『加速する時は上体が遅れ、ブレーキがかかると上体は前方へ・・』という風に作用・反作用の関係から上半身の動きは下半身と逆の動きが生じますね。その上体のブレを極力なくすための一助として腹筋や背筋が働きます。
  そこで少し極端な例えになりますが・・仮に脚部の筋はたいへん発達しているけれど、上半身を支える腹筋・背筋がものすごく極端に弱い人がいたとするとどうでしょう。
  走る都度その動きと重みを支えきれず、上半身は前後に大きく揺れてしまうでしょう。また、背骨を支えている腹筋・背筋が弱い事が原因で腰椎に負担がかかり過ぎたり、筋肉が過度に疲れて「腰痛」を起こす事も考えられます。
  “動き”の中で、上体を安定させ、目線を一定に保つ事はかなり重要な部分ですが、運動に直接関与している筋肉ばかりに目がいってしまうと、運動を合理的に行うために間接的に関与している物を忘れがちになってしまいます。
  ですから、スキーで滑る時に大きなウエイトを占める大腿部の筋を鍛える事だけが総てではないと思います。落下するスピードや板の走りに上体が遅れず、体軸の安定を保つためにも、リカバリー能力をつけるためにも、コブを滑るためにも、腰痛予防・・等々にも、腹筋力・背筋力は必要だと考えます。
  主になって運動に関与する筋肉のみにとらわれず、運動が効率よく行えるよう「補助的に」働いている筋肉の重要性をご理解いただけたらと思います。

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  三つ目のスキーをする上で大切な筋肉は?と言う質問ですが、一般的な感覚として滑走中に最も負荷を感じる筋肉は・・大腿部前面の筋だと思います。滑走中にはいろんな方向から圧や抵抗がきますし、スキーヤーの姿勢や動き方も関係してきますから、実際にはその筋肉だけが働いているわけではありません。
  そこで・・簡単な実験をひとつ・・。
  まず、壁から少し離れて横向きになって、膝を少し曲げて立ちます。スキーの外足にあたる足を軸にし、外足の小指側を持ち上げてエッジングをしている意識で、肩で壁を押しながらもたれ掛かってみてください。
さて・・どこの筋肉に力がかかっていますか?
  力がかかっている筋肉は一つや二つの筋肉ではないことがお解りでしょう。下肢を中心に、むこう脛、ふくらはぎ、太ももの前と後に内と外、それにお尻やお腹、腰に背中と、力のかかり具合はそれぞれの筋でまちまちですが、色々な筋肉に力がかかっていますね。
  “弧を描きながら滑る”という動きは単に外足を軸に壁にもたれ掛かるという単純な動作ではありませんが、少なくても、もたれ掛かる事で緊張している筋肉は、スキーをする上で大切な筋肉だと私は考えますが・・如何でしょう。

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