これもカービングスキーの台頭と関係があります。
運動の要素から見ますと腰の下(重力方向)からできるだけスキーを離さない方が素早い運動には効果的です。つまり腰の下にスキーが常にあるようなポジショニングがいいわけです。ところが,スピードを競うことになると状況は一変します。100分の1秒でも速ければ勝ち!という世界では『やり易さ』ではなく,『タイム』が命です。
タイムを早くするには雪面コンタクトが最大重要課題になります。そこでカービングスキーの登場となるわけですが,このカービングスキーを最も有効に使うには『角付け』が大事なファクターとなります。角を立てれば立てるほどカービングスキーの特性が活きてズレの無いターンができるのです。角を立てるためには膝をターン内側に寝せて軸を倒すことが大事になります。そして,できるだけ軸を倒してカービング特性を出そうとすれば,スキーの位置は身体の真下というよりは少し横にあったほうが効果的です。つまり,脚をワイドスタンス気味にして外スキーの角を立てるようにした方が良いわけです。このことから,スピードを追求するターンではワイドスタンスが主流となっています。
スラロームや小回りではどうかというと,スピードも大事ですが回転半径が小さいというターン特性を持っています。そこでスピードと回しやすさのどちらを優先させるか?ということになります。実際には,スラロームタイプのカービングスキーは板自身のサイドカーブが16mとか17mとかいう数値になってきています。そこではあんまり角を立てなくても雪面グリップができるように設計されていますから,方向変換ということ大事にしています。つまり,ワイドスタンスでなく比較的スタンスを狭目にする傾向があります。しかし選手の中にはけっこう軸を倒して操作性よりスピードに重点を置いた選手も見られます。その選手のスタンスは広目です。
では,『技術戦などでは小回りもワイドスタンスの方が高得点を挙げている』のはどうしてか?ということになります。「Boss39_64」さんは,おそらく急斜面での小回りではなく,中斜面で行なわれた「カービング小回り」という種目をご覧になってのご質問だと思います。ジャンプ台で行なわれた「急斜面小回り」は私も現地で見ましたが,ワイドスタンスはほとんど見られなかったように思います。この「カービング小回り」は2001年からの新種目で,私たちスキー教師も何のための競技なんだろう?と思っています。聞くところによると,この種目の目的は,『カービングスキーの特性を生かして小回りを行なう。カービング特性を引き出し,与えられた斜面状況にあった,できるだけ回転半径の小さいターンを行なう…』ということだったようです。ですから,ズレを極力避け,スピードに乗って小回りターンをする…というのがその趣旨らしいです。緩斜面やせいぜい中斜面でしか演技できない種目だ,というのが私の感想です。また『小回り』というターンの回転半径はどのくらいまでを指すのか?ということでも,またどれくらい回し込むのか?ということでもその考え方,演技要領は違ってきます。技術選の「カービング小回り」では縦長で,しかも小回りというよりは中回りに近い演技をした人も居たようです。
ですから,私の考えでは「小回りでむりやりワイドスタンスにする必要は無い」と思いますし,その利点も一般スキーヤーにはあんまり無いと思います。
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