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中道と中庸・・・私も中庸という西洋思想は知りませんでした。勉強になりました。
私事ですが、このコーナーで仏教に関連した事をよく書いています。しかし、私は仏教そのものに興味があると言う訳ではありません。いろんなスポーツや興味を抱いた事のバラバラな部分を突き詰めて行くと、いつも「仏教」と言うキーワードにたどり着いているような感じがします。
例えば、フリーダイビングの潜水時間を延ばす事を突き詰めているうちに、ヨガの呼吸法に出会い、それが仏教の教えにつながっていたのは良い例です。理論先にあらず体験先に有り・・・といった感じですが、今回はその辺りの実例を踏まえながら書いてみたいと思います。実は「中道」という考え方に出会う前にこの様な体験をしました。
Dr.Nのスキー以外の活動からの引用です。
私は、18年近くレーシング・カートをやっていますが、10年程前、レースに出ていた頃にタイムが伸びずに非常に悩んだ時期がありました。何をやっても上手く行かないのです。ドライビングを見てもらうと、特に悪い所は無い。マシンのセッティングをコーナーリング特性が出やすくすると、運転は楽になるのだがタイムは上がらない。ならば、加速性能を重視するとハンドリングは多少悪くなるが、これまたタイムが上がらない。レギュレーション内でエンジンをパワーアップしてもほとんどタイムは変わらない・・といった謎めいたものでした。当時は、速くなる為の事なら、ありとあらゆる事を試したような気がします。この状態は数年続いたのですが、ある時ふとした事でその原因がわかったのです。
それは私が極端な事ばかりを追いかけていたからでした。
例をあげると、セッティングに5つの項目があったとしたら、それらを全て120にすれば速くなると思って努力したのですが、実はある項目を120に持っていくと他の項目でマイナスが生じる場合があるのです。逆に全てに高次元を求めるより、5つの項目を限りなく100に近い95〜98ぐらいのバランスでセットするのが一番速いと言う事がわかりました。
つまり、マシンを速く走らせるために必要なのは、コースの条件に合わせた「高次元の全体バランス」だったのです。その数年後に「中道」という言葉と出会うのですが、マシンセッティングの基本が「中道」だとはその時は思いもしませんでした。
この話は、そのままスキーのレーシングや基礎、更には身体作りにも当てはまる事ではないでしょうか?
某スキー雑誌のベンジャミン・ライヒの記事に興味深い事が書いてありました。
彼はそれまでポールの近くをギリギリで回り、過激に身体を倒してエッジングしていたものを、昨シーズンはポールの少し外側を回る事によって滑りの安定を増し、更に成績をアップしたと言うものです。
これを仏陀の悟りになぞらえると、極端を突き詰めた所に自分の限界を感じ、バランス重視の滑りに自分を変化させた事に成功の秘訣があったと言えます。
このような話は他のワールドカップのレーサーの記事でも、時々目にする事があります。どうも、極端を追い詰めると短期間では成功するのだけども、長い目で見ると挫折や頓挫の危機に見舞われているように感じます。ひとつの事を突き詰めると、確かにその部分は良くなりますが、ある部分でマイナスを生じる事になるのでしょう。激しく攻め立てる滑りがリスクが伴うように・・・
ただし、中道的なバランス重視の言葉には、「攻め時には全力で攻める」と言う意味も含みます。単に妥協点を捜すという意味ではありません。米軍の作戦立案の基礎となる「問題解決法」においては、まず、情報の収集と十分な討議がなされ、数種類の作戦の実行可能性見積もりが行われます。実行可能と判断された作戦だけが実行され、そこに最大限の兵力を投入するのです。そして形勢不利となればあっさり撤退します。
つまり、物事を中道的に見るという事は、変化する世界(スキーで言えばマテリアルの変化等)を正しく見極め、正しい頃合いを判断し、柔軟に対応して行く事だと思うのです。
スキー上達の過程では、自分の得意な部分と苦手な部分を自己認識してバランスを取りながら次元を上げて行く事が必要です。太ももの表の筋肉ばかりを強化して裏側を鍛える事を忘れている。(これはDr.Kさんのオフトレ講座の方ですね)
基礎だからと言ってスキーを回す事ばかり考えて、肝心の”落下”する事を忘れている。カービングの板だからといってロングでレールターンばかりをやる。(お陰でゲレンデはロングターンのスキーヤーだらけ)。練習ばかりして、回りの風景や自然の美しさ・・・雪が織り成す一瞬の造形美を見逃す。まして、ライバルの同性の滑りばかりに目が行って、ゲレンデにいる美しい異性に気が付かない・・
…なんて事はもってのほかです。そんなことがないように、心の片隅に「中道・バランス」という言葉を心の片隅に覚えておいてほしいのです。そして、スキーやスポーツのみならず普段の生活においても「中道」という考え方を応用していただきたいと思います。
いや〜それにしても、自分自身の置かれた状況を正確に判断して、頃合いの判断を下すというのは口で言うのは簡単なのですが・・・。
(2001/09/29UP)
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