スキー道
(スキー心理学)
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  消費社会と欲望   bR 」
File 0014
by ”Dr.N”  2001/09/10

  今回は一連の精神集中シリーズから話を変えて、TOK先生がよく日記の中でも取り上げておられる「消費社会と欲望」に関連する事を書いてみます。
  今回もモンゴルシリーズで、その三回目です。
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  今年になって巨大テーマパークの連続オープンが話題になっています。
  私も是非とも行ってみたい場所ではあるのですが、それに関連して個人的に感じる事を書いてみます。

  その日、草原の一本道をがたがたと揺られながら、慰霊団に参加されていたルポライターの方と話をしていました。この方は成田空港建設の百里塚闘争で唯一、立てこもりの中から写真を撮影されたそうです。
  余談ですが、皆さんは草原を車で走るのは快適だと思われるでしょうが、実際はものすごくゆれが激しく、時速30kmも出せばトラックの荷台の中の荷物は全て飛び出しかねません。しがみつくのがやっとで、カメラを構える事すらできないのです。
  その方に「モンゴル病になりましたか?」と唐突に聞かれ、私が間髪を入れず「ハイ!!」と答えたのは日程第2日目の事でした。皆さんは「モンゴル病」って何かわかりますか?それはモンゴルに”はまって”しまう事を指す単純な言葉なのですが、現地では阿吽の呼吸でそれがわかるのです。

  さて、なぜかモンゴルの大草原でその方と国内某テーマパークの話になりました。
  恐らくモンゴル病の話に関連して大草原の素晴らしさを説いているうちに、比較対照として某テーマパークの話になってしまったんだと思います。
  「俺は○・・×が大嫌いだ。あそこは人工物しかなく、何かにつけてキャラクター商品で金を巻き上げる上手いシステムになっている。取材で行っても写真すら自由に取れないんだ!
(SAJのデモの写真と同じ意味でしょう)ほんと頭に来るぜ・・・!」とその方は言ってました。
  私も全く同感でした。私はそのテーマパークに3回行きましたが、確かに初回に訪れた時には、その人工物の出来栄えの細かさ・凝り様に、すごいな!と思いましたが、3回目には完全に飽きていました。(しかし、私はそうも感じながら、一般企業はこのテーマパークを見習うべきだとも思っています。接客、アトラクション・・来場するお客様を喜ばせるサービスは他の追随を許さないものがあります。)

  白馬の山並みは何度見ても飽きる事はありません。特にGWの八方は自然の息吹が感じられ大好きです。TOK先生がスキーの魅力を語られる時に、「自然との対話があるからいつまでたっても飽きない」という事を強調されています。俳優の高倉健さんがモンゴルの大平原を目の前にした途端、突然水平線に向かって歩き出し、30分?程歩いた所で突如立ち止まり、大粒の涙を流した・・・という話を聞いた事があります。人工物で固められたテーマパークをこぞって目指し、計画されたアトラクションに感激し、キャラクター商品を収集する事で得られる満足感。確かに私自身、楽しい思いを致しましたが、これは伝統芸能や伝統工芸品を見る事とは少し違う様に思います。イベントが大量に生産されているからです。まさしく消費社会の象徴だと言えないでしょうか?

  真の心の豊かさとは何でしょう?TVで有名進学塾に通う小学生がこんな事を言っていました。「人生の勝ち組みになるためには、今から良い中学に入って良い大学に進みたい・・・」
  彼が言う「人生の勝ち組み」とはいったい何なのか?そのように教え込んだ親の価値観は何なのか?恐らく大量消費社会に上手く乗っかる事が、人生に於いて「勝つ」事だと思ってるんでしょうね。(そもそも人生を勝ち負けで評価する事に問題があると思います。)

  近年アウトドアブームでキャンプを楽しむ方が増えてきましたが、本当のアウトドアと言えるのでしょうか?なぜ、キャンプの最中にゲームボーイをしている少年がいるのか??水洗トイレでないと用をたせない人々。自家発電機を持ち込んで、自宅の快適さをそのままキャンプ場に持ち込んでいるだけのアウトドア・・・。
  たびたび出てくるフリーダイバーのジャック・マイヨールが著書でこんな事を書いています。「スキューバダイビングを初める前に、まずフリーダイビング(シュノーケリング)を覚えて、海と同化する事を学ぶべきだ。水中に持ち込まれた空気を使い、マスク越しに見える海中の光景は、水族館のガラスを通して見る光景と何ら変わりがない。それは、人間の生活環境を強引に海中に持ち込む侵略主義に他ならない。海を知るには、まず海に溶け込まなければならない。」

  自然との対話を大切にしたい。ただの快適さや華美な快楽はいらない。
  そんな想いを胸に、今年もモンゴルに行く準備をしています。果たして草原での感動を再び味わう事ができるのか?過酷な土地なので、まずは事故のないように気を付けて行って来ようと思います。(不発弾を踏まないようにね。)

                                       

(2001/09/10UP)
【TOK】注:この原稿は8月中旬に”Dr.N”さんから頂いたものです。

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