オールラウンド スキーヤー

(メルマガ No.0022 12-11
-2001 より)

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今週のコラム “ オールラウンド スキーヤー ” ☆☆☆☆☆☆☆☆☆

  その昔,スキーの滑りについて,“フランス流スキー”と“オーストリー流スキー”の対決! ということが話題になったことがあります。このどちらがより合理的か?…ということが話題になったのです。ある説ではこの論争が「世界スキー指導者会議“インターシー”」開催のキッカケとなった…とも言われています。
  その違いを簡単に言えば,“フランス流”というのは「ローテーション」を主体とし,“オーストリー流”は「上体と下半身の逆ヒネリ」を主体とした滑り方です。結局,どちらもどちらで,利点と欠点があり,一方だけが優れているということでは無い…ということで落ち着いたと記憶しています。大回り系では「ローテーション」が,そして小回り系では「逆リバース」が適している,ということです。

  さて,ここのところ,“カービングスキー”が台頭して,オーストリースキー的な逆リバースや,迎え角意識は必要無い…というような風潮が高まっています。スキーのサイドカーブをうまく利用し,ローテーション的に進行方向内側に抵抗を求めて行きさえすれば,スキーの持っている性能で,ターンは楽に行なえる…というものです。このことは「スキー固有のサイドカーブに合ったターンをするなら…」という但し書きを添えれば正解です。しかし,自分の所有しているスキー板一本でいろいろな滑りをしようとすれば,つまり,大回りも小回りも同じようにこなそうとすれば,それは無理です。最近,小回りがうまくできないスキーヤーが増えた原因もここら辺にありそうな気がします。

  先日,ある技術選トップクラスのスキーヤーと話す機会がありました。小回りの話になって,その人は次のように話していました。「スキーの“R”に合ったカービングターンはそれなりにできる。大回りは大回りに,小回りは小回りに合ったRの板を使えば…。でも,Rの大きいスキーを使って小回りのカービングはできない。やろうとすればテールのズレや,迎え角,そしてヒネリを意識しなければ…」。つまり,スキー板の持っている固有のカービング特性を活かした,素晴らしいカービングターンはある特定の条件でしかできない…ということです。
  以前,「オールラウンドタイプ」ということを売りにしたスキー板がありました。「深雪もアイスバーンも,大回りも小回りも,整地もコブも…多方面にわたってひととおり滑れる…」というものですが,それだけにどことなく物足りなさを感じるスキーでした。もし,深雪で威力を発揮するスキーをしようとしたら,アイスバーンで切れることを同時に望んではいけない…ということを学びました。アレもできるコレもできる…というスキー板は作り得ないのです。

  …ということは,もしあらゆる条件で今流行りのカービングターンをしようとしたら,それぞれにあったスキー板を使わざるを得ない…ということになります。私たちスキーヤーにとって,それは無理な話です。実際には,毎年一本の新しい板を調達するくらいが関の山です。ゲレンデや雪山に持参した一台のスキーでいろいろなシチュエーションの斜面を滑らなくてはなりません。そこで大事になるのは,スキー板にオールラウンドを求められないなら,スキーヤー自身が「オールラウンドスキーヤー」にならざるを得ない,ということです。オールラウンドスキーヤーとは,「アレもできるコレもできる」スキーヤーのことです。カービングしかできない…ではなく,ズレもできるし深雪もコブも滑れる…そういうスキーヤーのことです。道具が違えば,その道具に合わせた滑りができるスキーヤーのことです。“スキーの基本”と言われてきた様々な要素の滑りができる人です。こういう人こそ本当の“スキーの達人”と言えるかもしれません。
  「道具を道具なりに活かした使い方ができる…達人」という意味で,“弘法筆を選ばず”のことわざもこういうことを言っているのかな?と思います。

  オールラウンドプレーヤーとしてのスキーヤーが一人でも多く増えること,を願いながらシーズンインを迎えた【TOK】でした。(^I^)
  

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