枯れたスキー

(メルマガ No.0018 11-12-2001 より)

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 “ 枯れたスキー ” ☆☆☆☆☆☆☆☆☆

  先週の火曜日,仕事が休みで天気も良かったので,信州大町の近くにある「山清路」から「差切峡」(脚注*1)に行って来ました。この地域は知る人ぞ知る,信州の紅葉の名所ですが,これまで行ったことがありませんでした。
  実はここ「山清路」でこれまで見たことの無い景色に出会えました!。「イチョウの落葉」です。初め,キラキラと輝きながら空中に舞っているのはいったい何なんだろう?と思っていましたが,よく見ると「イチョウの葉」でした。まるで「黄色い雪」が降っているようでもありました。丁度雲間から太陽の日がその葉に当たり,言葉どおり“キラッ!キラッ!”と光っていました。空中に舞う金色の宝石の様でもありました。妻も私も初めて見るその光景にしばらく見とれてしまいました。紅葉を見よう…というだけのつもりでしたから,一層強く印象に残りました。

  帰りの車の中で,あの景色は広い新雪の斜面を滑り降りるスキーヤーのようでもあったなぁーと思いました。朝日を浴びた斜面を,白煙をあげながら滑り降りるスキーヤーの集団…。音の聞こえない静寂の中を枯葉が舞い落ちるように上から下へヒラヒラと舞うように滑り降りる…そういうシーンを思い浮かべました。
  木から離れた枯れ葉が重力の法則に従い,一枚…そしてまた一枚空中に舞っていく…。それがスキーヤーの姿と重なってイメージされたのです。

  そして,以前,私のスキーの師匠「太谷多喜男」さん(脚注*2)に言われた言葉を思い出しました。「“スキー”を極めるというのは雪に身を任せることだ。自分からは動かず,雪の力をあるがままに受け止め,来たら引き,離れたら伸ばして,逆らわない…」という言葉です。大谷さんはこうも言っておられました。「水に浮かぶ木の葉を良く見てごらん。岩があればその脇を,川幅が狭ければ速く,広ければ悠然と流れて行くだろう…。自分が“枯れ葉”になった心境でスキーが出来るようになれば一人前だ。無駄な力を使わずに川の流れと一体になることだ…。」  これを「枯れたスキー」と名付けておられました。
  若い頃は,何を禅問答みたいなことを言っておられるんだろう…と思っていましたが,この頃その一端が見えてきたような気がします。

  「山清路」での「黄金のイチョウの乱舞」に出会い,「枯れたスキー」を思い出した私でした。


 (脚注*1)山清路,差切峡の景色の一端は次のURLでご覧になれます。
                  山清路  差切峡 
 (脚注*2) 太谷多喜男氏=6期連続SAJデモンストレータ。
                   元八方尾根スキースクール教師。

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