“ 頑張るスキー ” ☆☆☆☆☆☆☆☆☆
先ごろたまたまNHKのラジオを聞いていたら,元諏訪中央病院院長「鎌田実」先生がインタビュー番組で,「頑張らない」ということについて話しておられました。
その骨子は,終末医療における治療のあり方などについて,蒲田先生が書かれた本「頑張らない」を読んだ方々から寄せられたお便りに答える…というものでしたが,大変印象に残りました。特に,「治すこと」に重点を置いている現在の医療システムとは少し違った,「患者を支える」医療もある…ということについては,スキー教師として教わるものがありました。
先生は「頑張らない,あきらめない,希望を捨てないということが大事」と言っておられましたが,この「頑張る」という言葉については,いろんな人が,「“頑張る”は“我を張る”に通じ,あんまり良い言葉とは思えない…」と言っているのを耳にします。もちろん,困難に屈せず努力し続ける…という意味もありますが,どことなく悲壮感が漂っている気がしなくもありませんので,私も最近,できるだけ「頑張る」という言葉を使わないようにしています。これに代わる良い言葉は無いものかと思っていましたので,放送に聞き入ってしまいました。
蒲田先生は,「医療については,必ずしも“治す”姿勢よりも,時には“支える”姿勢のほうがナチュラルキラー細胞を増やす意味でも大事な時がある…」という風に述べておられました。私は医学は全くの素人ですが,ナチュラルキラー細胞(NK細胞)はガンに対して大きな免疫力があり,ガン細胞やウィルスが身体に侵入した時に食べてくれる作用があるということです。その働きは私たちの生体防御にとって非常に重要で,ストレスを感じた時はNK細胞の働きは低下しガンの芽が出やすいが,気分が良い時や心地よい時は増えている…ということです。
ここで言う「支える…」とは,治す,より良い状態に改善して行く,という意味ではなく,むしろ今の状態を今の状態として受け入れ,自然治癒力や精神的安寧の中から,心の平安を得るという姿勢のように思います。「頑張って治す」こと以上に「頑張らずに許す」ことが大事な時もある…そう言っているように思います。
さて,私たちが“スキー”を楽しむ時,頑張ろう頑張ろう,頑張ってうまくなろう…としていることが多いのではないでしょうか?。検定で合格したり,レースで相手に勝ったりするのも“スキー”の楽しさですから,そのために頑張ることは意味があります。しかし,それだけでは無く,「支える…」と共通した,心の平安に通じる楽しみ方の世界が,“スキー”にはあるような気がするのです。スポーツは勝負があるからスポーツだ…という見方をする人もいますが,それだけではない,勝ち負けにこだわらない,心の安らぎを感じることの出来る世界が…。
特に「深雪」を滑っている時などは,「自然の中の一構成物としてそこに溶け込む自分」を見つけ出すことが出来ます。自分自身の目標を設定しそれをクリアしている…とも言えますし,頑張るではなく,その場その場で最善を尽くす…とも言えます。しかし,なにも深雪でなくてもその喜びは感じられます。例えばプルークボーゲンしか出来なくても,雪からのいろいろなのメッセージを感じ取れるのです。プルークボーゲンだからこそ感じ取れる雪の感触があることが分かります。新幹線に乗っていたのでは見過ごしてしまう景色が,各駅停車の電車のスピードなら見えるのと同じ様に…。
経験を積み重ね,技術が上達してこそ味わえる喜び,も確かに存在します。でも,そこまで頑張らなくても各レベルレベルでそれに応じた楽しはあるのです。安易に満足することを勧めているわけではありません。2級を取らなければ,あるいは1級を取らなければスキーは楽しくない…そんなことは無い!ということをお話ししたいのです。
終末医療とスキーを同じように比べようとは思いませんが,蒲田先生のお話から“スキー”も「頑張って治す」=「頑張ってうまくなる」という姿勢だけでなく,「頑張らないで支える」=「あるがままの自分の技術で楽しむ」という考え方も意義のあることだ教えていただきました。
気分が良い時や心地よい時はNK細胞が増えている…ということですから,あんまり頑張らず,あるがままの自分の技術を受け入れ,“自分自身のスキー”を楽しみたいものですネ。(^I^)
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