重 心


(メルマガ No.0009
 09/04 より)

 “ 重心 ”       ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

  最近「重心」について,また考えさせられました…。

  カナダで行なわれた「世界陸上」ではハンマー投げの室伏選手の活躍に興奮しました。女子マラソンも興味深かったです。この土曜日と日曜日には白馬で「インラインスケート技術選」なるものを企画し,開催いたしました。その実行委員で事務局を担当いたしました。

  これらの競技をいろいろ見ていて感じたことがあります。それは競技選手の「重心の移動軌跡」についてです。室伏選手は普通の選手なら3回転でハンマーを離すところを,4回転後に離すそうですが,その時の彼の,「腰の動き」に目が行ってしまいました。回転数が多い分だけ重心の回りを回るハンマーの重さと,それを支える脚の力や足のグリップが重要になるのですが,その激しい一連の動きの中で,身体のある部分が異様に静かだなぁー…という印象を受けたのです。それはまさに彼の「重心の位置」でした。そしてその重心が,最初の動作からどのような軌跡をたどってリリースの時まで移行するのか?を見ていると,最短距離を移動していることに気付きました。
  ハンマーの先端の錘と,その大きな遠心力に耐え,体を支える足のグリップ地点との微妙なバランスを取っている部分…それこそ「腰」あるいは「重心」の位置に他ならない…と思ったのでした。

  インラインスケートを使って“スキー”のトレーニングをしよう…ということで,最近これが注目を集めています。私達もこれに興味があり,どのような効果があるか?ということを探すために「インラインスケート」で行なう「スキー的な運動の技術選」を開催しております。今年で3年目を終了しました。初めはインラインスケートをうまく使いこなす人も少なかったのですが,今回の大会ではかなりいい滑りをする人が増えました。そしてその運動も合理的で美しくさえ感じられました。
  ここで気がついたことは,扱い方がうまく,氷の上を滑るように滑らかな動きをする人にはある共通点がある…ということでした。それもやはり「重心の位置とその軌跡」でした。重心の高さが地上からいつも一定の高さ…というわけではありませんが,一連の滑らかな曲線を描いているひとの滑りはダイナミックさもあり,身体のバランスが良く取れていました。
  この重心の位置…男性と女性とではその高さが異なり,人体の重心を足底から測定すると,成人男子では身長の約56%,女子では55%の位置にある…とのことです。ちょうど「ヘソ」の付近ということになります。
  そして上半身と下半身の蝶番(ちょうつがい)的な役目をし,身体のバランスをとる上で重要な役割を果しています。

  上に挙げたハンマー投げやインラインスケートに限らず,マラソンのような陸上トラック競技でも,また柔道や剣道のようなスポーツでも,「重心」の位置やその軌跡は大切なポイントとなっているのではないかと思います。状況判断のための「目線」が動かないことや,力の急激な方向変換を防いで安定した運動をする意味でも大事なことだと思います。
  “スキー”もこの例外ではありません。身体を思いっきり動かしてスキーを操作しようとする人が居ますが,それは「重心」をいたずらに変化させているだけで,無駄な運動となり披露の原因ともなります。「重心の位置とその軌跡」を考えて滑ってみると,また違った意識のスキーが楽しめると思います。

  みなさんもスポーツを見る時,ぜひスポーツ選手の「ヘソ」の位置に注目してみてください。別の視点から“美しさ”を感じることができるはずです。(^I^)

2001/09/4 

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