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「  スキーと武道の共通点・・? 」
File 0026
by ”Dr.N”  2002/08/28

  お久しぶりです。長い間ネタ切れが続きまして・・・
 先生の日記を読んでいて、久々に思い付いたことがありましたので書いてみようと思います。

  先日の日記の中で、スキーと武術の共通点に関する話題がありました。スキーと武術の共通点・・・??一見すると全く共通性は無いように思われがちですが、実は大いにあるんですよね〜・・・と言うことで、これから私の経験を少し書いてみましょう。

  私の青春時代は、格闘技漬けだったと言っても過言ではありません。アマチュアレスリング、柔道、空手・・・。私の友人たちもボクシング、少林寺拳法、日本拳法・・・と格闘技好きばかりでした。小柄な私ですが、アマチュアレスリングでは、インターハイの個人戦で全国ベスト16になった経験もあります。その影響で大学時代にはレスリングに似た柔道に手を出してみたものの、アマチュアレスリングには無い関節技と締め技に苦しめられ全く芽が出ませんでした。
  そんな時、大学の先輩に誘われて、ある有名な実戦空手道場の門を叩きます。ここでもレスリングの実績があればすぐにトップ選手になれると思っていたのですが、現実は甘くはありませんでした。思いがけない伏兵があったのです。組み技主体の格闘技と打撃主体の格闘技では、求められる柔軟性・筋肉の質・瞬発力・持久力が全く違ったのです。それから3年ほどマイペースで空手を続けましたが、空手の身体ができるまでにずいぶん時間がかかった事を覚えています。結局、空手でも目立った成績は無く、怪我の多さに足を洗う決心をしました。

  そんな格闘技一直線の私が友人に誘われてスキーを始めたわけですが、数年後にさらに苦しむ事になります。それは後述するとして・・・スキーと格闘技の共通点は?と聞かれると、私が真っ先に思い浮かべるのは「重心」についてです。
  格闘技とは、一部の寝技や関節技を除けば、相手のバランスをいかに崩すか?の勝負だと考えています。文字通り相手を「倒す」という事です。柔道の投げ技やレスリングのタックルは、まさしく相手の重心を崩す行為そのものですし、外力によって崩れそうになった自分のバランスをいかに保持するか?が防御の決め手となります。またボクシングや空手などの打撃系の格闘技では、効果的な技を出すために重心移動の感覚が非常に重要ですし、相手にダメージを与えるには的確に相手の中心(重心?)に向かって蹴り込む(パンチを出す)事が必要になってきます。またノックダウンの原理は、頭部の重心に揺さぶりをかけて大脳に衝撃を与える事です。
  むろんこれらを行うには、自分の土台となる腰、そして足裏の感覚が非常に大切になります。この辺は、特に格闘技にか限らず他のスポーツでも同じ事が言えるでしょう。(詳しくはDr.K氏に譲りますが・・・)

  話は変わって、次はスキーと格闘技の意識上の話題です。
  前述しましたが、私がスキーを始めて大変苦しんだ事。それはごく最近まで「Do意識」でスキーをしていた・・ということです。とにかく何事も全力で行く!とにかく筋力を使ってすばやく動く!・・そのような感覚でスキーをしていました。技術的な壁にぶち当たった頃に仏教で言う「中道」という考え方や「バランス」という言葉を意識し始めていたものの、スキー運動の中で「引く」という概念は全く無く、TOK先生の「引くスキー」を知った時は雷に打たれたような驚きを感じました。・・が今振り返って思うと、何より問題だったのは、常に「他人に勝たねば」という格闘技的な意識が心の中にあり、最終的には「力」で決着をつける・・という歪んだものの考え方にあったように思います。「自然との調和」といった概念など微塵もありませんでした。

  しかし、どうやら「Let感覚」はスキーだけに限らないようですヨ。先日、新聞でこんな記事を見つけました。居合術についてです。
  「鞘(さや)の中」:要するに刀を抜かないことである。めったな事では抜かないが、相手が切りかかってきた瞬間は一気に抜く。距離を詰めるのは相手である。その勢いを逆に利用するのが居合術だ。つまり「受け」の呼吸を磨いた技といえる。
  敵を自分の懐に誘い込み、その進んでくる力を使用して切る・・・というのが奥義だそうで、そう考えるとやはり格闘技も「Let感覚」が必要だったのか?・・・そうすると私の格闘技経験もまだまだひよっこだったなぁ・・と思えてきたのでした(笑)

  さて最後に、こんな話をひとつ。
  かの有名な、映画俳優でもあり武道家でもあったブルース・リーが、映画「燃えよドラゴン」で言った台詞です。教えを請う弟子に向かって一言こう言います。「考えるな!感じるんだ・・・」。

  これってまさにTOK先生の「フィーリング・スキー」じゃないですか?
  学生時代、あまりにキザな台詞なので友人たちとお笑いネタで真似をしていたのですが、何か真実味を帯びてきた昨今です。

                                        (2002/08/28 UP)

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