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「 プラナ・ヤマ 」 bQ
File 0009
by ”Dr.N”  2001/07/30


  今回は、プラナヤマの後日談を書きたいと思います。

  そもそも「プラナ・ヤマ」の言葉の意味ですが、「プラナ」とは大気のエネルギーと言う意味があるようです。「ヤマ」には身体に取り込む意味があり、合わせて”大気のエネルギーを身体に取り込む”と言う意味になります。
  その「プラナ」ですが、大気中のマイナスイオンだという解釈もあります。森林浴に代表されるように、自然豊かな森や海辺にはマイナスイオンが多く存在するそうです。エアコンで空調された室内の空気のマイナスイオンは消滅しているとか・・・マイナスイオンの効果は科学的に立証はされていませんが、宇宙船の人工空気にイオン発生器が取り付けられていたり、今年発売の多数のエアコンでイオン発生器が取り付けてあることから、何か大切な事があるのかもしれません。マイナスイオンの効能はさておき、大自然の中で呼吸法をすれば身体に悪いはずがありませんよね。

  話を元に戻しましょう・・。今週、偶然にも会社の後輩からこんな話を聞きました。
  それはあるTV番組の内容でした。前回紹介した格闘家のヒクソン・グレイシーですが、400戦以上無敗という記録を持っています。(近年、ルールでごまかしてるとか、勝てる相手としか試合をしない言う声もちらほらと)何故に彼がそんなに強いのか??TVでは彼の師匠という人がインタビューに答えていたそうです。
  その怪しげな師匠曰く「彼が試合に望む時は、彼は人間ではない。野生動物になっているのだ・・。」

  実際に、ヨガのポーズの中に熊か何かのポーズがあって、それをやりながら自分が野生動物であるイメージを高めているという話でした。例えばヨガには逆立ちのポーズがありますが、これをやる時には必ず、上下が逆になったと瞑想しなければなりません。つまり、自分を中心に頭に床が乗っていてその上に大地が乗っていると・・・(これが何の役に立つのかわかりませんが)
  これは以前、TOK先生がサイパンの帰りに見られた光景から日記に書かれていた「地球に吸い込まれる雨」に共通する話です。

  さて、熊のポーズの真相はともかく、後輩からこの話を聞いた時、私には2つピンと来るものがあり、妙に納得したのでした。
  @実戦空手の極真会館の創始者である大山倍達氏が、その著書でこんな事を書かれていました。
  「中型犬以上の動物が逆上して人間に襲いかかって来た場合、無傷のまま勝つには刃物を使うしか方法は無い。」
  同じ事ですが、動物園で人間より小型の霊長類のチンパンジーが逆上した場合、飼育係が3人かかっても取り押さえる事ができず、麻酔薬を使うしか方法が無い・・という話を聞いた事もあります。もし、対戦者がヒクソン・グレイシーと同じ体重のゴリラやオランウータンと戦っていると想像したら・・・私は人間が勝てるはずがないのを実感しました。

  A前回紹介したフリーダイビングのジャック・マイヨール。
  彼が到達しようとしたのは自分がイルカになりきる事でした。彼は人間の中に潜在している水棲哺乳類としての能力(人間は進化の過程で一時期水辺で暮らしていたという説がある)を、数々のトレーニングによって高め、完全に引き出すことにより水棲哺乳類(彼が目標とするイルカ)として水に潜っている、という事なのです。
  奇しくも、種目は違えどヒクソン・グレイシーとジャック・マイヨールは「本能」という点で
全く同じ事をしていた事になります。(これに気がついた時は、ビッビッときましたよ)

  野生動物としてのホモサピエンスになるという事は、いったいどういう事か??
  それは、理性の脳である大脳皮質から、原始の野生の脳である脳幹部へ意識を降ろす事、と考える学者もいます。
  私は上の2点に大いに関連がある話を、ある特集記事で読んだ事があります。それは、94年に亡くなったレーシングドライバー、アイルトン・セナ・ダ・シルバの、88年日本GP優勝の際の話題です。
  彼はそのレースでスタートに失敗したものの、後半豪雨の中を猛烈に追い上げて優勝し、初のワールド・チャンピオンを手中に収めました。その時、セナはゴールライン直後の1コーナーで神の姿を見た・・というのです。この時の映像をご記憶の方もいらっしゃるかもしれませんが(と言っても13年も前の話ですが)、ゴール直後のマシンの車載カメラは、訳のわからない事を叫びながら取り乱しているセナの姿を捉えていました。

  私は、「どうせ感動を大げさに伝える為に神を代用してるんだろう。全くおかしな事を言うもんだな・・」と思いながら記事を読んでいたのですが、読み進みながら少し驚いたのです。こんな内容の事が書いてありました。
  人間は大人の脳である大脳皮質からの抑制が、原始の脳である脳幹部に対して行われており、例えば「酔う」という事で抑制が外れ、欲望が剥き出しとなるが、高度なトレーニングを積んだアスリートであれば、原始の脳でしか感じない「第六感の情報」が大脳皮質にもたらされている。
  彼(セナ)が他のドライバーと大きく異なる点はそういう点であり、そのトランス状態の中で歓喜のあまり、彼の脳内で神が見えたのではないか・・というものでした。

  真実はさておき・・・・以上の話をまとめると、天才と呼ばれる能力を発揮する人々は、普段、我々が感じることのできない「本能」の部分をうまく引き出しているのでしょう。人間が本来持っている能力をいかに目覚めさせるのか?
  その入り口の一つにヨガの技法があったという事ですね。

  「あがりの対処法」からとんでもない所まで話が発展してしまいましたが、さてそうなると、本能を呼び覚ます為にスキーでは何になりきれば良いのでしょうか?
   そもそもスキーとは後天的要素(生後身に付ける運動)の強いスポーツという事なので、野生動物の例えようがありません。崖を転げ落ちる岩でしょうか?岩になりきれば「落ちる」という恐怖も無くなるかもしれませんね。
  そのあたりは、私よりスキー経験の豊富な方がたくさんいらっしゃるので、おまかせいたしますが・・・(笑)

(2001/07/30)

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