“フィーリングスキー” 
          
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                     Chapter 3    プルークボーゲン No.1

 Contents  ☆★☆

0017 左右の圧バランス

0016 スキーの前後差

0015 ターンとは?

0014 オレンジターン事始め





      -------------☆★フィーリングスキー★☆-----------No.0017----
 今回は「ターンする」の三回目で“左右の圧バランスを変える”…がテーマです。
 前回お話ししたように,土踏まず近くを体を支えるポイントとして,一本のスキーの前後差を利用すれば,スキーには回転しようとする力が生まれます。このとき大事なのは「自分でスキーを操作しなくても…」ということです。初心者の方がプルークボーゲンをしようとするとき,ほとんどの人はスキーを「みずからの力でズラす」意識で行なう人が多いのですが,ここではあえて「雪の力で」ということにしておきます。それは後で大事になる「Do感覚」と「Let感覚」の違いを,できるだけ早い時期に感じ取って欲しいからです。
 さて,スキーをV字形に開いて,斜面を下りていくと,図のように右スキーは左方向に,左スキーは右方向に向きを変えようとします。もし,左右両足におなじように乗っていると,体重が左右に分散されて,およそ1/2の体重がそれぞれに掛かることになります。つまり,同じだけの圧力が左右均等に掛かりますから,「左に回ろうとする力」と「右に回ろうとする力」は同じ強さになって,向きを変えようとする力は,左右互いに打ち消され,真直ぐ進むことになります。これがV字形のまま真直ぐ滑り降りるという「プルークファーレン」という状態です。
 じゃ方向を変え,ターンするにはどうしたらいいか?というと,「左右の足にかかる体重の重さを違えてやれば良い…」ということになります。つまり,左右の足裏の荷重バランスを変え,雪面コンタクトの強さを変えれば,スキーヤーはその方向を変えることができる,ということです。例えば,体と雪のコンタクトの力(圧)が全体で100だとします。もし右足に70掛かり,左足に30掛かるとすれば,70−30=40分の差が出,右足の圧が40だけ多くなります。その分だけ右足のスキーが強く雪の抵抗を受けることになりますから,全体としてスキーヤーの体は左に回り始めるのです。
 そこで大事なのが,この圧バランスをどう崩すか?ということです。
 普通はみずから圧を加えることで、この荷重バランスを崩してやります。脚を曲げて荷重したり、脚を下の方に伸ばして圧を加えたりするわけです。例えば右にターンしようとしたら、左の土踏まず辺りにより多く荷重します。すると、左の方の圧が右の圧より大きくなりますから、左のスキーが右へ回ろうとする回転力が右スキーの左に回ろうとする力より大きくなり、結果としてじょじょにスキーは右にターンするのです。この操作は雪に自らの力や体重を掛ける動作なので、私はこれを【Do】(ドゥー)と呼んでいます。
 
左右の荷重バランスを崩すのに、もうひとつのやり方があります。それは,圧を加える意識ではなく、ターンしようとする側の圧を軽くする方法です。例えば、右にターンしようとする時は、プルークのまま斜面下方に滑って行き、右の脚を上体方向に引き上げるようにして、少しずつ右の圧を弱めて行くのです。すると結果的に左スキーの圧が右のそれより強くなりますから、スキーは右方向に向きを変えて行きます。これを【Let】(レット)と呼んでいます。
 次回は,この【Do】と【Let】をどのようにしたら感じ取れ,使い分けられるか?ということについてお話することにします。


      -------------☆★フィーリングスキー★☆-----------No.0016----
 さて,今回は「ターンする」の二回目。
 スキーの進行方向を変え,行きたいところに進むためには,前回話したようにいろいろなやり方があります。ここでは“フィーリングスキー”ということがメインテーマなので,スキーの形状と雪の力を利用して方向を変える方法の中の,“スキーの前後差を利用する”ことでターンをしてみたいと思います。
 少々理屈っぽくなりますが,ある程度「どうしてそうなのか?」ということを頭の中で理解できていないと,「ナルホド…じゃあやってみるか!」という気持ちになりにくいので,少しだけ我慢してください。(^I^)
 
スキーをほんのわずか「V字形」に開いて,真直ぐ滑り降りたときのことを考えてみます。スキーが少し開いていますから,雪面とスキーが接する場所はスキーの内側部分,ブルーの線の所になります。この状態で進行方向に進んでいくと,スキー全体としては,このブルーラインのところに雪からの力を受けます。もし,足裏の「土踏まず」付近を踏んでいれば,スキーのトップではレッドラインの部分で雪からの力を受け,テール側ではグリーンラインで雪の力を受けます。
 スキーの形は見て判るように,土踏まずから先端までの長さ「L」の方が,土踏まずからテールまでの長さ「l」より長くなっています。この状態でスキーが進行方向へ移動すれば,L>l ということなので,トップ部がテール部より大きな雪の力を受けます。大きな力を受けたトップの方は,テールに比べ進行方向に進む力が抑えられますから,そこに留まろうとする作用が働きます。つまり足裏の荷重点(支点)を中心として,テールは外側に出て行こうとし,トップは内側に入り込もうとする力が働きます。矢印のような,スキーの向きを変えようとする力=回転モーメント,が生まれるのです。
 このように,一本のスキー板のことを考えてみると,支点から前後それぞれの距離が違うこと,そして雪の力を貰うこと…,これがスキーの方向を変える原動力になる…ということが,理解いただけると思います。
 次回は,二本の板がターンにどのような関わりを持っているか?についてお話したいと思います。

      -------------☆★フィーリングスキー★☆-----------No.0015----
 さて,今回からはいよいよ「方向を変える」ということを“フィーリングスキー”的に考えてみたいと思います。今回はその第一日目で“ターンとは?”ということから…。
 ターン=“turn”は「回転させる」,「方向を変える」という意味ですが,その語源はギリシャ語のtornos(円を描く道具)だそうです。つまり“スキー”でいうところの“ターン”も「丸い曲線で円を描くように方向を変える」ということになります。イナズマ型のようにカキッ,カキッと方向を変えるニュアンスはあんまり無さそうです。
 “方向を変える”必要性は,どこにあるか?というと,他人や何か他のものにぶつからないようにするためだったり,スピードを落として安全に滑るためだったり,あるいはターンそのものの快感を求めるためだったり…ということになります。滑る快感やスピード感を求めるなら“直滑降”の方が速く滑れますから優れています。でも,どこでも,いつでも真直ぐ滑り降りる…ということだけを求めるわけにはいきません。そこで「自分の行き先をコントロールすること」が大切になり,そのための“技術”が必要になります。
 “直滑降”から,どのようにしたら“ターンする”ことができるようになるか?というと,それには大きく別けて次のつの方法が考えられます。
  ※スキーを自分の力で操作する
    1.スキーを空中に持ち上げ,自分の力でプロペラのように回す。
    2.スキーのテールを体の外側に押し出してスキーの向きを変える。
  ※スキーの形状と雪の力を利用して方向を変える。
    3.スキーの形状のうち「前後の長さの違い」を利用する。
    4.スキーの形状のうち「サイドカーブ」を利用する。
 いずれの方法でも“スキー”を楽しむことはできますが,それぞれに特徴があります。
 「1」は,最も手っ取り早い方法ですが,なにせ疲れます。また一気にその方向が変わりますのでスピードがあんまり出せません。大きいターンより小さいターンをするのに適しています。
 「2」は,以前盛んにやられた時期がありました。まだスキーの性能が良くなかった頃の話です。これもあんまり有効に雪の力を利用しませんので疲れます。また,スキーを横に振り出すので高速では危険です。低速でゆっくり整地された斜面を降りるときには安心して滑れる方法です。今でもスピードが出過ぎたときなどチョッチョッと使うことがあります。
 「3」は,スキーの設計された意図を素直に使う…という意味で,最も一般的な滑り方です。スキー板の最大の特徴といっていい「トップがテールより長い」という特性を生かした滑りになります。ズレの要素を伴った滑り方ということもできます。雪の力とスキー板とのマッチングが重要になりますが,その組み合わせ如何ではいろんな斜面上を低速から高速まで,幅広い滑り方ができます。
 「4」は,最近のスキー板の高性能化によって可能になった滑りで,スキーのサイドカーブを利用した滑りと言っていいでしょう。切れの要素を追求したカービングターンと言われ,レースやエキスパートスキーヤーが高速で滑走するのに最も適しています。また,エッジングと斜面移動を覚えれば手軽に方向を変えることができるので,最近注目されていますが,スピードコントロール,という意味で「3」の滑りがある程度できるようになってから挑戦したほうがいいと思います。
 モチロン,これらの滑りがそれぞれ独立して使われることはほとんどありません。実際のターンでは,それぞれが少しづつ組み合わされて,複合的な技術で「方向を変える」ことが行なわれているのが実情です。逆に,ある特定の技術だけでターンしようとすることは,スキーの楽しみの幅を狭くすることになるでしょう。
 “フィーリングスキー”では「3.スキーの形状のうち“前後の長さの違い”を利用する」…ことから始めたいと思います。(^I^)

      -------------☆★フィーリングスキー★☆-----------No.0014----
 さて,前回まで,「雪原散歩」,「直滑降」,「プルークファーレン」を通じて,「雪からの情報を感じる」…ということについてお話してきました。そして,感じようとするにも,ただ漠然と感じるのではなく,感じる「場所」,「方向」,「量」を意識することが,身体の自然な反応を引き出すこともお話ししました。
 しかし,そうは言っても,足裏に意識を集中させ感じ取ることはなかなか容易ではありません。そこで思いついたのが“オレンジターン”でした。「スキーQ&A」の【TOK】流スキー術にもそのあらましを書いていますが,「感じ取る」ということを,足裏に「オレンジ」を意識することで,よりイメージしやすくしよう…というものです。足裏に意識するのは何もオレンジでなければならない理由はありませんが,私はオレンジを使っています。雪面コンタクトをしっかりさせ,バランス維持やスキー操作の上でも想像以上の効果がありますので,再確認の意味で,お話しして行きたいと思います。
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 「プルークファーレン」で「感じる“場所”,“方向”,“量”を意識する」ことについて触れました。じつはこの練習でも「オレンジ」を足裏にイメ-ジすると感覚が早く飲み込めます。
 右の図のように,足裏と雪の間に「黄色いオレンジ」がある…というイメージを持ちます。実際に在るわけではありませんが,「A」や「B」「C」のようにイメージするのです。すると体重がその部位に掛かりますから少しだけつぶれる感じがつかめます。そのときどれくらいつぶれているか?がイメージできれば,それは「感じる強さ」=コンタクトの強さ,を感じ別けている…ということになります。また,青線の矢印の方向から雪の力を受ければ,オレンジは前後に押しつぶされ,平べったくなるイメージが湧きます。これは「感じる方向」=除雪抵抗の来る方向,が意識できたことになります。さらに,このオレンジがどこに置かれているかな?ということを感じれば,それは「感じる場所」=荷重点(支点)を感じ別けている…ということです。
 このように「オレンジ」をひとつ足裏に意識することで,漠然と感じるというよりもさらに鮮明にコンタクト状態を把握できるようになります。足裏に意識したオレンジがいろんな形に変化しながらつぶれている様をイメ-ジする事で,足裏感度を高めることができるのです。
 次回からは,このオレンジをイメージすることで「プルークボーゲン」を楽しみたいと思います。
 

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