“フィーリングスキー” 
          
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                      Chapter 4    プルークボーゲン No.2

 Contents  ☆★☆

0020 サイドスリップ

0019 押すと引く(2)

0018 押すと引く(1)


      -------------☆★フィーリングスキー★☆-----------No.0020----
 前回までは「プルーク」状態で,左右のコンタクト圧変化をどのような意識で行なったらうまく変えることができ,ターンに結びつけられるか?についてお話してきました。
 今回は,それでは「直滑降」から「プルーク」状態にするにはどうするか?…についてお話します。実は初心者にとっては,プルーク状態で真直ぐ滑り続けることと同じくらい,このことも大きな難関のひとつなのです。
 このやり方にも【Do】てきなものと【Let】的なものがあります。
 「【Do】的なもの」…とは,上の図のレッドラインのように「スキー板」そのものを自分の力で横方向へ押しやる意識のものです。横に押すだけだから簡単!…と思われるでしょうが,コレがなかなかできません。直滑降状態ではスキーの真上に体があるので,その分横方向への成分を生み出すのが難しいのです。左右の板を均等になるように,注意深く足を広げてやらないと,片方だけの開き出しになってしまいます。また最近のようにカービングスキーでこれを行なおうとすると,ネジレ剛性が強いために雪面をズラスことが尚一層難しいのです。そのため,直滑降で滑り出したら,重心を一度下げておいて,「ヨイショ!」の掛け声と共にジャンプするような意識で,両スキーを一気に開きださせたりしますが,前に滑っている状態でこれを行なうのは大変なことです。ある程度運動能力があったり,バランス感覚に優れている人は難なくできますが,そのコツがつかめない人は大変な作業になってしまいます。
 さて,「【Let】的なもの」とはどういう意識のものでしょうか?直滑降で滑り始めたら,下の図のように足裏にオレンジを意識します。オレンジを意識する場所は土踏まず付近で結構です。そしてそのオレンジを図のようにコロコロと転がすイメージを持ってみます。スキー板を押す意識でなく,足裏のオレンジに意識を持たせるのです。土踏まずに意識したオレンジがゆっくり転がって,くすぐられるような感触が感じられたら,その時スキー板は少しづつ横の方に出ているはずです。オレンジがレッドラインのように回転するにつれて,グリーンラインのように足が外側に出て行きます。
 スキー板は土踏まずから先のトップの長さと,後ろのテールの長さが違っていて,トップの方が長いので,その分トップは横方向に移動する量が少なく,結果として直滑降からプルーク状態にすることができるのです。
 この“オレンジが転がるイメージ”は「カタツムリが触覚を伸ばして障害物を感知しようとする仕草」と意識的に似た部分があります。オレンジが転がるイメージを持つことによって,それがどれくらい転がっているか?という情報を足裏から重心方向に伝え返している…ということなのです。カタツムリが触覚を伸ばすのは力を加えるためではありません。モノを感知するためです。オレンジの回転状態を認識しようとするする仕草も,“感知しようとする意識”のひとつなのです。結果的に脚は伸びていきますが,これは「“押す”という意識」より,「“探る”という意識」の結果表れる運動だといえます。この感覚を私は「【Let】的感覚」と呼び【Do】的感覚と別けて考えています。
 上達したスキーヤーが回転しながら滑って行くとき,クロスオーバーを経て,次の外スキーが雪面を捕らえる局面で脚が伸びる動作が見られますが,この時の脚の伸びは“押す”という意識より“探る”という意識の結果表れる運動だ,と私は考えています。うまい人のスキーイングでは,この局面で「重心の高さが変わらない」…ということがそれを証明していると思います。
 「直滑降」から「プルーク」状態に…現象的に見れば「サイドスリップ」のさせ方…ですが,初心者の練習するこの運動の中にも“スキーを楽しむ大きな秘密”が隠されている。…そう思うと本当に“スキー”って面白いですネ! (^I^)

      -------------☆★フィーリングスキー★☆-----------No.0019----
 さて,“フィーリングスキー”0018 で「押すと引く」についてお話しましたが,今回はこの時の足裏感覚についてもう少し付け加えたいと思います。
 「押す」あるいは「引く」という感覚は具体的には,足裏に意識したオレンジが「どういう風な状態になるか?」ということをイメージアップすることで行なうと効果があります。
 左のアニメーションは“押す(Push)”という意識の,また右のアニメーションは“引く(Pull)”という意識のものです。画像をクリックするとアニメーションが見れます。
 “押す”という意識は,重心方向からの力が赤い色のオレンジを少しづつ,つぶしていくイメージです。どちらかというとダイレクトに雪面に自分の力を加えていく…という意識です。自分みずからの力でターン方向を決めていく気持ちが強い滑りになります。
 一方“引く”という意識は,初めに少しつぶれていたオレンジが元の形に戻っていくイメージです。引くことによって反対側のスキーの圧力が増し,結果的にターンが始まる…という意識です。スキーの性能が生きてターンが自然発生的に始まるという感覚が強い滑りになります。
 どちらの意識でもターンは開始しますが,スキーヤーとしての内面的な心の違い方は両極端です。どちらかというと運動能力の高い初心者は「押す感覚」の方が適しているようです。体力の無い人や,エッジコントロールがうまくできない人は,「引く感覚」がうまくターンを誘導できます。
 この段階の初心者にはどちらの滑りも経験してもらうことがいいでしょう。特に運動能力の高い人は,「“引く”なんていらないよ!“押し”さえすりゃスキーは回るよ!」という人も居ますが,将来的なことを考えるならば,どちらの意識も持った方が良いと思います。“押す”では重心の位置が変化しますが,“引く”ではほとんど変化しません。この「重心の位置が動くか動かないか?」が後で大きな意味を持つことになるのです。
 【Doスキー】をメインに練習してきたスキーヤーも,機会をとらえて【Letスキー】の大きな柱となるこの“引く”意識の練習をされることをお勧めします。




      -------------☆★フィーリングスキー★☆-----------No.0018----
 さて,今回は「圧バランスを変える」の二回目で“オレンジを押すと引く”…がテーマです。
 前回お話ししたように,左右の圧バランス(雪と足裏の雪面コンタクト量)を変えるには【Do】的なものと【Let】的なものがあります。これは非常に似ている事のようで,実は大きな違いがあります。この感覚を磨くために以前,お話した「オレンジ」を足裏に意識してみます。黄色の円のように,両足の裏の土踏まずにそれぞれ一個づつオレンジを想像するのです。
 さて,上の図「Push」はこのオレンジをレッドラインのように,ヒザの方向から足裏の方向に力を加えて押しつぶす意識です。上体をかぶせ,腰やヒザを折るようにして低い姿勢になりながら押すのが普通です。中には脚を突っ張るようにしてオレンジを押すようにする人も居ます。こうすることで右足に掛かる圧が増しますから,スキーは左方向に回り始めます。右足のかかとを外に出すようにする必要はありません。これが【Do】的な感覚です。
 さて,今度は下の図「Pull」のように左足に意識しているオレンジを,グリーンラインのように,腰の方向に引き上げる意識で行なってみます。最初は両足に均等に乗っかっていますから,オレンジは約半分くらい足裏でつぶれている感覚があります。このオレンジを,足を引き上げる意識で圧を弱め,まん丸のオレンジに戻すようにしてみるのです。こうすると,左足のコンタクトが右足より少なくなり,結果的に右足の圧力が強くなって,スキーは左方向に回り始めます。これが【Let】的な感覚です。
 【Do】でも【Let】でも,結果的にスキーは回転を始めますが,その中身は大きく違うことだけを,先ず頭に入れておいてください。私の経験では初心者にプルークボーゲンをお教えする場合に,【Let】感覚の方が【Do】感覚に比べて約7割の方がよりすんなりできるように思います。
 ところで,この方法を試された方から「左を引き上げて、軽くしてはいるが、結果的に右が強くなるのだから、圧を加えるのと同じではないですか?」という質問を受けることがあります。でも実はまったく異なるのです。圧を加える方法では、加えようとする時に必ず荷重点と重心の距離=レッドラインが「短くなるか,長くなるくか…」します。つまり,脚が「縮むか伸びるか…」するのです。一方引いて軽くする方法では,右足の圧は強まっても右脚の「荷重点と重心の距離、長さは変わらない」のです。重心の高さが変動しませんから,上体の形も変わることは無く,目線も同じ位置にあり,周囲の状況判断を的確にするうえでも優れている,といえます。
 【Do】とか【Let】とかいうことは,ある程度スキーに習熟してきたときに大事になりますが,先ずここのところでは,足裏に意識したオレンジが「よりつぶれたり」,「元に戻ったり」…ということを大事にすべきです。足裏でオレンジを介して,雪を感じること…。これが第一です。オレンジの形が左右の足裏で自由に変化し,それがスキーの方向を変えるとことに結びついている…ということを楽しんでください。(^I^)



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